彼女のイデア(1)思春期の爽やかさと湿っぽさを感じる学生百合漫画

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「イデア」とは簡単に言うと完成された理想の姿のことです。遠くに見ていた『理想』が近くにきた時『現実』なります。それが本来の姿なはずなのに「違う」と思ってしまうことありますよね。


※ネタバレ含みますのでお気をつけください



こんな人におすすめ

・ 女子高生のキャッキャした賑やか感じが苦手な方
・ 思春期の爽やかさだけじゃないリアルな姿がみたい方
・ 憧れの人がいる方

作品概要

タイトル:彼女のイデア(1)
作者:冬芽 沙也
出版社:KADOKAWA

あらすじ

自分に自信が持てない日向いとは中学2年生の冬に同い年の女優・澄花に心奪われ、憧れの存在として心の支えとしていた。高校生になったある日、ひょんなことから澄花と出会う。澄花のその姿はいとが思い描いていた姿とは程遠く、ショックで受け入れることができない。一方で澄花は自分に厳しい言葉をかけたいとのことを気に入る。しかし、いとが自分の言動によって離れていくことを感じ「どうしたらあなたにファンでいてもらえる?」とその答えを求める。それに「私が『澄花』を作ってあげる」と答え、いとが理想とする澄花を作っていくことに。

おすすめ見どころポイント3選

①2人の拗らせ女子高生

主人公・日向いと
自分に自信が持てず、自己肯定感低めの女の子です。憧れの人の言葉に傷ついた過去がありそれをずっと引きずっています。そのような過去があるからこそ「憧れの存在は私の理想であってほしかった」のでしょう。澄花に過去の憧れの人を重ねて見てしまっているところがあり、何も知らない澄花にも八つ当たりしてしまう「理想」と「現実」が曖昧なところがあります。面倒くさい感じの子ではありますが、澄花に振り回されて嫌な思いをしつつも放っておけない、人に対する優しさが感じられます。
いとの憧れの女優・澄花
幼い頃から芸能界にいて甘やかされてきたのでしょう。THEわがまま★な子で最初はイラっとしましたが、いとに対してはとても素直だし、いととの『澄花』作りが進むにつれて周りにも柔らかい態度になっていきます。また、普段は大人びているように見えるけれど、幼いところも見え隠れして可愛らしい子です。

②2人の「澄花」作り

澄花作りと称して、ドラマの撮影にいとを巻き込んだり、イベントの準備のために遊びなれていない2人で街に繰り出したり、徐々に2人の関係ができていく、作っていく過程は微笑ましく、素晴らしいです。ただ、澄花がいとに対する気持ちを自覚してからは澄花の中ではいとのための澄花作りになっていきます。もともといとにファンでいてもらうためのものでしたが、女優としてではなく、個人として好かれたいという思いが強くなっていきます。そこの意識の変化も注目です。

③奇妙な関係

憧れの存在(澄花)に自分の理想でいてほしいいと。自分を見てくれる存在(いと)を離したくない澄花。2人にの関係はお互いに依存しているようで奇妙です。関係性は少しずつ変化していきますが、依存という形は変わらないように思います。

個人的感想など

女子高生が主人公ですが、大人びた2人がメインなのでキャッキャした賑やかな雰囲気は少なめです。(ほぼない!?) テレビや雑誌で見ていた姿に勝手に自分の理想を重ね憧れていた存在に実際に会ってみたらまったく違った。『理想』と『現実』。10代の頃にはそのあたりを区別するのは難しいよね~と懐かしむ気持ちで読みました。そのような経験を繰り返して大人になっていくんですよね。(大人でも遠い存在に勝手に理想を抱いて何かあれば勝手に理想と違うと言い出す人はいますが)
1巻の最後で澄花はすでにいとに対する恋愛感情を口にしています。いとは憧れという感情から脱してどのように恋愛感情に変化していくのか今後楽しみです。こじらせているので素直にとはいかない気がします。いとが『理想』と『現実』差ををどう受け入れていくのか期待しています。
若さ特有の賑やかさが苦手な方でも楽しめる学生百合だと思います。サラッとした爽やかな雰囲気の裏側にあるであろう高校生という年齢で感じる湿度を楽しめる作品です。




5月28日2巻発売されました!